チェンソーマン
これは昨年流行ったジャンプの漫画ですが、あまりにも少年誌には相応しくない内容でした。極めてグロい。しかも難解なシナリオが多く、全てを理解して読んでいる人はいないのではないでしょうか。そういった意味では少年層ではなく漫画好きをターゲットにして流行したといえる実力派漫画かもしれません。
魅力としては主人公の爽快な暴れっぷり。チェンソーマンというくらいなので敵(デビル)を倒すときにぐちゃぐちゃにする。これが爽快と思えるならハマる性質を持っています。
グロい描写が多いですが、普段の描写ではキャラクターは可愛く描かれていますし、主人公にはコミカルな天然さがあって、読んでいても疲れません。そのギャップが楽しいのかもしれません。戦いの描写の勢いは凄まじく、見ていてドキドキします。
最終回の落ちも意味がわからず納得できない?人もいるかもしれませんが、作者のことを知っているファンからすれば普通のことらしい。
様々な魅力を兼ねそろえた作品です。興味があるけどまだ読んでいないという人は、ぜひ読むことをオススメします。
Dr.STONE
チェンソーマンとは打って変わって王道のジャンプ漫画です。
友情・努力・勝利を全面に感じることができる清々しい作品です。ストーリーとしては、世界が謎の石化現象により、文明が崩壊したところから始まります。科学に長けた主人公が仲間とともに文明を一から作っていく、その過程が極めて楽しいです。道具を作り、便利な生活を実現する。戦いに勝つためにお手製のスマホ(通信機器)を作る。ときに仲間を喜ばせるためにコーラを実現させる。我々が生きている世の中にある当たり前を一から再現していく様子が楽しいですし、改めて文明の上で便利さを享受して生きているんだなと実感できます。仲間とともに明日をより良くするために工夫し、楽しく生きる。そんな当たり前が眩しく描かれているので是非読んで欲しいと思います。
次は、魚豊(うおと)さんが描いた2作品
ひゃくえむ。
この人の作品は言葉の力がめちゃくちゃに強い。ワードセンスが光っています。本質を捉えているからこそ、短く強く表現しています。
ひゃくえむ。は100m走をテーマにした作品であり、その距離に人生を掛けるということはどういうことなのか?ということを全5巻で駆け抜けるように描かれています。
特に言葉のセンスが光っているのが全日本陸上を勝ち続けている財津選手。
中学生への講演の冒頭
「浅く考えろ」「世の中を舐めろ」「保身に走るな」「勝っても攻めろ」
以上、では質問をどうぞ。
です。
この魚豊さんは勝負の世界にずっと身を置いてきたんじゃないかと疑うほど、重みとキレのあるセリフです。漫画家も小説家もそうですが、人の琴線に触れるセリフを生み出せるのは心底尊敬します。
チ。―地球の運動についてー
この作品は天動説が主流であり、地動説が異端として扱われていた時代のお話。そんな中、天文に詳しい天才たちが地動説の存在に気づき、考え方や常識がパラダイムシフトを起こしていく。そんな人々の衝撃が実感として読み手にも伝わってきます。ただのちっぽけな人間が宇宙の存在を解明し、その美しさに神の存在を感じる。雄大なお話を我々が身近に感じてしまうのが、作者の実力が高いという証左であると思います。
ぜひぜひ、「ひゃくえむ。」と合わせてお読みください。
雪女と蟹を食う
難しい純文学を漫画で描いているような作品。
金も仕事も失い、自殺を思いとどまった主人公が、半ば自暴自棄となり女性を襲おうとするところから物語は始まる。「なんでも言うことをきくので乱暴はしないで」と冷静に対応されてしまう。美人だが人生から熱を失ったような女性だ。もともと目的もなく衝動的に行動していた主人公は、女性から要望を聞かれるが「北海道まで蟹を食べに行きたい」と無思慮で言ってしまう。それを受けた女性は「いいですね」と肯定し、先ほどまで露ほども知らぬ男とともに北海道稚内まで蟹を食べる目的で道中を共にする。
生きることの目的など些細なことでもいい、しかし生き続けなければならない。
物語を通じて常に冷たさと死の面影を感じながら、滑稽な目的から始まる物語が旅の終焉に向け綺麗に収束していく。これが純文学を思わせる要因であると思う。
文学好きの大人向けの作品です。
娘の友達
アラフォーサラリーマンと女子高生との背徳的な関係性を描いた作品。
単なるエロ漫画でなければ、純愛の話でもない。
社会に蔓延している常識と、それに無理やり合わせたことにより生じる歪み。不倫、不登校、毒親、鬱、自殺といった現代社会にはびこる様々な問題の根本に切り込んだような作品。女子高生の可愛さとあどけなさが作品全体を覆う暗さを紛らわせているが、この女の子自身も両親との関係性に問題があり、行き過ぎた束縛を受けている。「普通」とは何か、人と同じでなければダメなのか。上手に生きるために自身が感じた違和感に蓋をして生きている、そういった人の悩みを解決するものではありませんが、多様性を重視する現代だからこそ、共感して読める人が多いと思われます。固定観念に疑問を持ち、社会から与えられた役割に疲れた大人にこそ見て欲しい作品。
以上、ジャンルも無茶苦茶で恐縮ですが、最近読んだ良い作品を紹介しました。
また機会がありましたら、他の作品も紹介していきたいです。
お疲れ様でした!
コメント