日米首脳テレビ会談について

その他

令和4年1月21日 岸田総理とバイデン大統領が約80分のテレビ会談を実施しました。

言うまでもなく、日米トップの会談は極めて重要な意味があります。

この懇談で話された内容は、今後、両国がどのような方針で国家の意思決定をしていくかを決定する意味合いがあり、国内だけでなく国外からも極めて注目されている懇談であると言えます。

ちなみに前回は令和3年9月に菅前総理がクアッド(日米豪印戦略対話)の枠組みを決定するために渡米し、10分程度会談を実施しています。それより前になるとバイデン大統領が令和3年1月に米国大統領に就任後、コロナで各国首脳との会談がなかなか実現しない中、4月になってようやく実現したはじめての外国の首相との会談(150分程度)が菅前総理でありました。

日本の中ではあまりニュースになることはないですが、就任して1番最初に会う外国の首相は外交的にその国を重視しているというメッセージが込められており、日米両国が高いレベルで連携する必要があるというアメリカの思惑が感じ取れます。

今回の会談時間が菅前総理と比較して短いのは、テレビ会談という形式であったこと(対面と違い双方向な意見交換がしにくい)と岸田総理が直接英語で懇談されている(と思われる)ので通訳を介す必要がない分、短い時間で意思疎通を図れたからだと推察できます。

今回、会談された内容については下記の首相官邸HPから確認できます。

令和4年1月21日 日米首脳テレビ会談についての会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
総理の演説や記者会見などを、ノーカットの動画やテキストでご覧になれます。

概要をまとめると

  1. 「自由で開かれたインド太平洋」(Free and Open Indo-Pacific(以下、FOIPという)の実現
  2. 中国の覇権主義的な行動への対処
  3. 日米同盟の強化
  4. 経済版2プラス2
  5. 核軍縮
  6. ウクライナ情勢への対応
  7. 在日米軍コロナ対策、国際会議(脱炭素)へのステップアップ

全部掘り下げると長くなるので、今回は①~④まで掘り下げて言及していきましょう。

1 自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)

これは安倍前総理が地球儀を俯瞰する外交を実施していた時にアフリカ開発会議の中で提唱した考え方です。今ではこの戦略に共感したアメリカが積極的にこの言葉を用いて国際的に定着してきた背景があります。安倍前首相が意図したかどうか不明ですが日本発信の戦略的構想がキャッチーなフレーズとともに定着しているのは面白いです。安倍前首相が外交上手と言われたのも、こういったセンスがあったからだと思慮します。

FOIPとは、国際社会の繁栄の鍵を握る2つの大陸(「アジア」と「アフリカ」)と2つの大洋(「太平洋」と「インド洋」)の交わりによって生まれるダイナミズム(力強さ、活力)で①法の支配、②経済的繁栄、③平和と安定の確保、を目指すことにあります。

日本としては中国が掲げる一帯一路構想に対抗するために打ち出したものであり、わが国が経済・外交・防衛を行う上で極めて重要な戦略的指針になっています。

2 中国の覇権主義的な行動への対処

以前はメディアにおいて中国の経済発展を肯定的に賛美する報道がありましたが、最近は少数民族の人権弾圧や新型コロナウィルスの起源を巡り世界に対する不誠実な対応などで頗る評判が悪いのが中国の印象です。経済発展や先進技術の優位性から日本はおろかアメリカに対しても強気な対応をするようになったのがここ数年の印象です。中国の一帯一路構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)などは途上国に対して中国に貿易及び経済発展において中国依存にさせ、服従させるような政策を長く継続してきました。

世界史を見ると、かつてのアテネとスパルタのように、既成の大国と台頭する新興国が戦争に至る確率は70%以上と言われています(ハーバード大学のベルファーセンターの研究)。実際に中国は2008年頃にアメリカの太平洋軍司令官に対して太平洋を二分するように提案をしています。現在は保有する艦艇及び原潜もアメリカに比肩していますし、対空母ミサイルは有効射程や保有数を見ても米海軍(第7艦隊)の脅威になっているのは間違いありません。(最も中国に有利なデータでは、2020年時点で米軍の297隻に対し、中国軍は360隻に上った。このデータでは、中国軍艦艇数は30年には425隻に達すると予測している。)

今後、中国人民を統制することが難しいとなると軍事的合理性を度外視し、革新的利益である台湾への侵攻を決断する可能性は十分にあるといえます。

3 日米同盟の強化

日本の総理が耳にタコができるほど口にする「強固な日米同盟を目指す」という言葉。日本人の中にも保守的な考え方やリベラルな考え方が様々ありますが、前提として日本の安全保障環境は米国抜きで考えることはできません。日本周辺を見ると一方的な現状変更を試みる国があり、自国だけで安全保障を維持することはできません。

高橋洋一氏は著書の中で「有効な同盟関係を結ぶことで戦争のリスクは40%減る」と述べている通り、日本としては在日米軍に多くの思いやり予算を払っても周辺国へのけん制ができていることから、割に合う同盟関係だと感じてしまいます。

今回の会談の中で、バイデン大統領から日米安保条約第5条に尖閣諸島が日米同盟の適用内とするという言質を得たことも強調されていました。以前から同様の言質は取れていますが、改めて認識を共有したということでしょう。日本としてもアメリカに対しておんぶにだっこでは面子が立たないので、岸田総理はより高いレベルでの連携ができるように新たに国家安全保障戦略などを策定し、日本の防衛力を抜本的に強化する旨も伝えたとあります。今までは水戸黄門の印籠的な効力しかなかった日米同盟ですが、より実力行使が(助さん格さん的な実行力を持った)可能になり、抑止力に繋がるものになっていくものと思います。

アメリカとしても2019年に国防総省が実施した中国の台湾侵攻に対する図上演習では18回中18回負けたとあります。どのような前提で演習をしたかが分からないので何とも言えませんが、実際戦った場合は同盟国の動きで結果が左右されるはずです。西太平洋においてはアメリカとしても日本を最重要なパートナーとして考えていると思います。

4 経済版2プラス2

今まで軍事と外交の2プラス2があり、両国の軍事と外交が密接に関わりあい幅広いジャンルでの協力を実施していました。そこに外交と経済という領域でも緊密に取り組んでいくという意気込みを感じます。中国が唱える超限戦(非対称戦)という考え方があります。

もはや軍事vs軍事という概念で戦える時代ではありません。宇宙、サイバー、電磁波、先進科学技術、外交、スパイ、謀略、経済、思想など上げればキリがいないですが、自国が有利に進めるためには軍事・外交・経済の単体を特化させるだけではなし得ないものになっています。

日本の官公庁はおそらく縦割り気質が強いと思いますが、トップダウンで2プラス2を実現し、官公庁も領域を横断するような緊密でスピード感のある連携をしていかないと有利に戦えないでしょう。平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンで如何に戦う態勢を整えるかが、今後も重要になるでしょう。

非常に長文になってしまいました。

依然として、日本の置かれる状態は予断を許さないものとなっています。

国内においては少子高齢化など様々な問題を抱える日本ですが、日本の国益を守れる政治家が増え、高い教養を持った国民が増えれば乗り越えられない問題はないと信じています。

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